毎日の車いす生活が少しラクになる!体をほぐす習慣、はじめてみませんか?《股関節・膝関節・足関節編》
- Sit-Fit Owner

- 10月2日
- 読了時間: 6分
更新日:10月2日

前回の記事『毎日の車いす生活が少しラクになる!体をほぐす習慣、はじめてみませんか?《肩関節・背部編》』にて、車いす生活で特に硬くなりやすい部位は以下の5箇所とお伝えしました。
① 肩関節 ② 背部 ③ 股関節 ④ 膝関節 ⑤ 足関節
身体が硬くなってしまうとベッドや車などへの移乗が難しくなったり、捻挫や肉離れなどの怪我をしやすくなったりしてしまいます。 車いすユーザーの身体の硬さは生活に影響を及ぼす可能性があるため、軽く見過ごしてはいけません。
今回は、前回に引き続き③股関節・④膝関節・⑤足関節がある下肢(下半身)についてお伝えいたします。①肩関節・②背部については『毎日の車いす生活が少しラクになる!体をほぐす習慣、はじめてみませんか?《肩関節・背部編》』をご一読ください。
車いすユーザーが用心すべき『拘縮』
皆さんは『拘縮(こうしゅく)』という言葉をご存知でしょうか。
下肢の柔軟性について触れる前に知っていただきたいことがこの『拘縮』です。
『拘縮』とは、骨折や入院、車いす生活など長期間体を動かさない状態が続いたり、疾患によって引き起こされる関節の変形や痛み、手術後の癒着の影響などによって筋肉・腱・皮膚などが硬くなり、本来なら伸びきるはずの可動域まで関節が伸びなくなってしまう状態になってしまうことを示します。
そして、一度関節が伸びなくなってしまうと、『拘縮』が起こる前のように関節を伸ばすことがとても難しくなってしまい、注意が必要です。
『拘縮』してしまい、その部位をケアするためには『一日最低でも30分は拘縮の部位を持続的に伸ばさないといけない。』と述べている研究もあります。そうなってしまっては大変です。
そうならないためにも、日頃から柔軟性を上げておくことはとても大切なのです。
そして、身体に多々ある関節の中でも特に下半身の関節である股関節、膝関節、足首は拘縮が起こりやすいため、しっかりケアをしていきましょう。
・股関節について
股関節はもっとも硬くなりやすい関節のうちの一つです。
車いすでの座位姿勢は、常に股関節と膝関節が曲がっている状態です。
そのため、車いすユーザーは一日の大半を股関節が曲がっている状態で過ごしているため、股関節を伸ばすという動作がかなり限られてしまっています。
股関節のストレッチやケアを怠ると、股関節の筋肉が固まってしまい、拘縮のように関節が完全に伸び切らない状態になってしまうことがあるので要注意です。
・股関節のケア
まずは股関節が硬いかどうかを確認してみましょう。
うつ伏せになることで簡単に判断できます。
下の写真のように、腰が浮いてしまっていると股関節が硬くなっているサインです。
こうなる前にストレッチを行いましょう。

上の写真のようにうつ伏せになって倒れてください。
これだけでしっかりと股関節を伸ばすことができます。
また、余裕があれば手をついて身体を反ってさらにストレッチを行ってみてください。より効果が望めます。
ただし、腰を反りすぎてしまうと腰痛の原因になってしまうため、その際にはなるべくお腹に力を入れて腰が反りすぎないように注意して下さい。
・膝関節について
膝も股関節同様に硬くなりやすい関節です。膝が伸び切らないと真っ直ぐに立つことができなくなってしまうため、膝の柔軟性も大切です。
車いす生活では、2つの筋肉(ハムストリングスと腓腹筋)が膝裏で常に縮まってしまっているために硬くなりやすいのです。そのため、膝の柔軟性を確保するためにはふくらはぎと腿裏を同時にストレッチすることが必要となってきます。
・膝関節のケア
写真のように長座状態で足首に紐やタオルなどを引っ掛けてのばしてください。
関節が硬くなってしまっていると膝が曲がってきてしまうため、写真のようにしっかりと膝を手で押さえつけておくと、より効果的なストレッチを行うことができます。

・足関節(足首)について
車いすユーザーで足がピクピクと動いている人を見た、または自分がそうだ、という方もいらっしゃるかと思います。これは『クローヌス』といって脊髄など中枢神経が損傷した時に起こる、筋肉の反射が連続的に続いてしまう状態です。
『クローヌス』は血行をよくしたり筋量を維持するためにもとても重要なのですが、ケアを怠るとこの『クローヌス』が原因で足首の柔軟性がどんどん低下してしまうことがあります。
今まで多くの車いすユーザーとお会いしてきましたが、健常者同様の正常な足首の可動域が確保されている人は本当にごく僅かでした。
・足関節(足首)のケア
足首の柔軟性を確保するには、膝を伸ばす時同様、長座で足首に紐を引っ掛けてふくらはぎを伸ばすのが効果的です。しかし、それだけではなかなか足首をまっすぐ伸ばしづらく、十分なストレッチにはなり辛いのが現実です。
ではどうやって足首の柔軟性をあげれば良いのでしょうか。
実は、足関節の柔軟性をあげるには、立位姿勢を取ってしっかり足に体重をかけることが一番重要なのです!
単に足首を伸ばすだけでは伸び辛いのですが、立位姿勢であればまっすぐ足首を伸ばすことが可能であるため、非常に効果的です。また、立位姿勢は足首だけではなく、上記の股関節、膝関節も同時に伸ばすことができます。
ですが、車椅子ユーザーにとって家で立位姿勢を取るのは難しいため、無理のない範囲で日々のストレッチを欠かさずに行っていただければと思います。
立位姿勢ができるようになりたい、でもセルフトレーニングは難しい…と思われた方はユニトレもご検討ください。専門トレーナーによる、より専門的なアドバイスや指導を行います。
股関節・膝関節・足関節は、日常生活の中で硬くなりやすく、拘縮にもつながりやすい部位です。 放っておくと移乗や立位、歩行といった基本的な動作にも影響が出てしまうため、日々のストレッチで少しずつ柔軟性を保つことがとても大切です。
今回ご紹介したケア方法は、ご自宅でも取り入れやすいものばかりですので、ぜひできる範囲から継続してみてください。もし「一人では難しい」「もっと効果的に取り組みたい」と感じられた方は、専門的なサポートを受けることもおすすめです。
毎日の小さな積み重ねが、快適な車いす生活につながります。 次回も皆さんの生活に役立つ情報をお届けしていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。


