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車椅子ユーザーに多い”褥瘡”とは?知っておきたい基礎知識

  • 執筆者の写真: Sit-Fit Owner
    Sit-Fit Owner
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

車椅子ユーザーに多い”褥瘡”とは?知っておきたい基礎知識

車椅子ユーザーに多い褥瘡(じょくそう)は、身近でありながら意外と正しく知られていない合併症のひとつです。

今回は、そんな褥瘡の基本的な知識についてお伝えできればと思います。



褥瘡とは

褥瘡は、一般的に「床ずれ(とこずれ)」という名称で普及しています。
その名の通り、寝たきりの方にのみ発生するものだと誤解が生じやすいのですが、実は車椅子ユーザーにとっても注意が必要なトラブルなのです。

日本褥瘡学会では、褥瘡とは『身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。』と定義しています。

言い換えると、長時間同じ姿勢を続けることで身体の一部(体重で圧迫されている場所)の血流が遮断または悪くなり、皮膚やその下の組織が圧迫されることで血流が悪くなり、組織が傷ついてしまう状態のことを指します。


ベッドや車椅子で長時間同じ姿勢を続けることによって起こりやすく皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまいます。

一見、皮膚の赤みや皮が剥ける程度に見えるかもしれませんが、褥瘡は進行すると筋肉を侵し、最悪の場合は骨にまで達する深刻な傷になることがあります。

これにより、入院や手術が必要になり、長期にわたる入院生活につながることもあります。
そのために、褥瘡は車椅子ユーザーにとっても軽視できない重大な合併症なのです。


褥瘡の分類

褥瘡の評価にはさまざまな方法がありますが、今回は特に分かりやすい「NPUAP分類」に基づいた4段階について説明します。

I度:皮膚が赤みを帯びており、押しても色が変わらない状態です。

II度:皮膚の表面が傷つき、水疱ができるか、浅いクレーター状になっています。

III度:傷が深くなり、皮下組織まで達するクレーター状の損傷が見られます。

IV度:傷が更に深く、筋肉、腱、骨にまで達してしまいます。

この分類では、I度が最も軽度で、II度、III度と進行するにつれて重症化していきます。
IV度では傷口が壊死し、深刻な穴が開く状態に至ります。
さらに重篤化すると、感染症に繋がり、命を脅かす危険もあります。

特に注意が必要なのは、皮膚が赤いI度の段階です。
ただ単に表面が赤くなっただけではなく、その下で血流が悪化し、組織の損傷がすでに始まっている可能性があるためです。
褥瘡は皮膚が赤くなる前から予防することが重要で、赤くなってしまったら速やかに対策を講じる必要性があります。


褥瘡ができやすい部位

褥瘡ができやすい部位

車椅子ユーザーにおいて褥瘡が発生しやすい部位はお尻かかとの2箇所です。

特に注意すべきはお尻の部分です。

お尻はクッションとの間で常に圧力を受けている状態にあるため、尾骨や坐骨の周辺は褥瘡が特に発生しやすく、褥瘡予防に最も注意を払うべき箇所なのです。



褥瘡ができやすい理由

車椅子ユーザーにはなぜ褥瘡が発生し悪化するのか、大きく分けて5つの主な理由があります。

  1. 感覚の麻痺

    脊髄損傷などがある場合、圧迫されていても痛みを感じないことがあり、感覚麻痺があるとこのような感覚が失われ、痛みやしびれを感じにくくなります。

  2. 動作の制限

    除圧や寝返りなどの動作ができないため、一定の部位に持続して圧力がかかり続けます。

  3. 筋肉量の減少

    麻痺や活動不足により筋肉量が減少し、骨が突出しやすくなり、少しの圧力でも皮膚が赤くなりやすくなります。

  4. 皮膚の摩擦や衛生状態の悪化

    皮膚が健康でないと、摩擦によって簡単に傷がつき、衛生状態が悪いと傷の治りが悪くなります。

  5. 低栄養

    栄養状態が悪いと、皮膚の健康を維持することが難しくなり、傷がつきやすくなります。

このうち、1〜3は直接的な圧力が原因で、4と5は皮膚の抵抗力が低下する要因となります。
特に、脊髄損傷などで運動機能に麻痺がある場合、異常を感じても体を動かして圧力を逃がすことが難しいため、褥瘡が発生しやすくなります。
さらに、むくみや関節の拘縮がある人も褥瘡になりやすいため、特別な注意が必要です。


まとめ

今回は、車椅子ユーザーにとって重要な問題である褥瘡について基本的な知識をご紹介しました。

褥瘡は、長時間同じ姿勢を保つことで体圧が特定の箇所に集中し、発生するものです。
そのメカニズムとしては、感覚の麻痺、除圧動作の不足、筋肉量の減少による皮膚への直接的な圧力、さらには摩擦や衛生状態の悪化、低栄養による皮膚の脆弱化が主な原因となります。

褥瘡は正しい知識と日々の小さな工夫で、リスクを大きく減らすことができます。

ぜひ今日から、姿勢やクッションの見直し、皮膚のチェックなど、できることから始めてみてください。


参考文献

  1. 日本褥瘡学会、2005

  2. 褥瘡患者さんの為の栄養ケアポケットガイド 監修:美濃良夫先生 May 2013.

  3. 日本せきずい基金 You Can!〔増補改訂版〕第12章 褥瘡

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