今回のSIT-FITの記事は基礎代謝と下肢筋肉量に関してになります。 天気のいい日には外に出て、散歩や運動がてら車椅子をいつもより長く漕いでみようなんていう方も多いのではないのでしょうか? しかし、健常者と比較して筋肉量が少なく基礎代謝が低下している車椅子ユーザーにとっては車椅子を漕ぐだけでは不十分なのです。 今回は車椅子ユーザーの基礎代謝と下肢筋肉量という観点から、いかに麻痺部の運動が重要かについてお伝えいたします!
運動量と基礎代謝
皆さんご存知の通り、車椅子ユーザーは身体機能麻痺や上肢に依存する車椅子生活によって、身体活動量が大きく下がってしまいますよね。 そして活動量が少なくなってしまうと、脂肪を燃焼することができなくなり、どんどん太っていってしまうこともあります。 さらには生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病)に繋がる可能性が出てきます。 そのため、車椅子ユーザーは健常者以上に日々の運動量を意識しないといけないと言えるでしょう。 つまり、筋肉量を維持し、基礎代謝を高く保つことが肥満予防、そしてダイエットにもつながるという事になります!
たくさん車椅子を漕いでいるから平気。それは真実か?
筋肉量の維持、そして活動量を落とさない為にも、運動をしなければなりませんね。
中には日頃から車椅子をいっぱい漕いで運動しているから大丈夫。と思われる方も多いかもしれません。
確かに車椅子を漕ぐことで運動量も上がります。
そして上半身の筋肉量も維持できるので、ある程度、基礎代謝は維持できます。
残存機能を生かして筋肉をつけて、筋量を落とさないことはとても大事です。
しかし残念ながらそれだけでは不十分なのです。
被験者数は少ないですが、車椅子バスケの選手を対象に基礎代謝を調べた研究があります。
この研究では平均で週3回以上運動をしている車椅子バスケの選手でさえ、
下肢筋肉量は健常者と比較して、なんと30~40%ほども減少している
と報告されています。
そして、下肢筋肉量と基礎代謝は相関関係にあるのです。1
つまり、下肢筋肉量が低いといくら上半身を一生懸命鍛えていても基礎代謝は落ちてしまう。
それはハードに運動して上半身にしっかり筋肉がついている車椅子バスケの選手でさえ、健常者と比較すると基礎代謝は落ちてしまうのです。
一般的に30代成人男性の一日の基礎代謝は1520kcal/日と言われています。2
今回の研究では車椅子バスケの選手の平均基礎代謝が1288kcal/日でした。1
つまりどんなに運動をしていても下肢筋肉量が減少してしまうと200kcal以上の基礎代謝の差が出てきます。
さらに衝撃的なことに、これは約30分水泳をして消費されるレベルのカロリー量と一緒なのです。
上半身がしっかりしている車椅子バスケの選手ですらこうなので、
定期的な運動をしていない車椅子ユーザーは?
と考えると恐ろしいですよね。
基礎代謝を下げない為の解決策は? では下肢筋肉量を落とさない為に、そして基礎代謝を落とさない為にどうすれば良いか?
答えは、、、
麻痺部を動かす
ということです。
もちろん「麻痺」している部分なので自力で動かせる範囲というのは限られています。
しかし、これは他動的にでも動かすことで筋肉量を維持することができます。
また電気治療(FES: Functional Electrical Stimulation) では麻痺部分の筋肉量を増加できるという研究も報告されています。3
FESとは写真のような機械で、自動的にペダルが動くのと同時に電気刺激でペダルの動きに合わせて筋収縮が起こる画期的な機械になります。
他動的な動作ではありますが、動作と筋収縮が両方起こるので運動機能の維持に非常に効果的です。 なので、下肢筋肉量を維持して基礎代謝を高く保つというのが秘訣なのです。
しかしながら、日本の病院にもなかなかこういった機器はありません。 さらにはコレ自体を購入しようとすると一台何百万円とする非常に効果な物ですので、 なかなか実用的ではないかと思います。 (しかも、医療器具に当たるので個人では購入できないかも。。。)
そんな時はユニバーサルトレーニングセンター(UTC)で麻痺部を動かしてみませんか?
UTC では 麻痺部の運動をどんどん積極的に行なっていきます。 そうすることで今まで全く出なかった筋収縮が徐々に出るようになってくることは少なくありません。
難しい麻痺部の運動だからこそ、パーソナルトレーニングでしっかり動かしていくことが必要なのです。
車椅子を漕ぐなど運動をすることは勿論車椅子ユーザーに欠かせないです。 でも定期的に麻痺部を動かしていくことも車椅子を漕ぐことと同じくらい重要なの事なのです。
皆さんも、普段一人ではなかなか感じることのできない感覚を感じてみませんか? そうすることで、上肢・下肢共に筋肉を保つことができ、健康的な体へ近づくことができます!
▼パーソナルトレーニングが気になる方は▼
参考文献
車椅子バスケットボール選手の体組成と基礎代謝量
厚生労働省e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」
Hicks, A L, et al. “The Effects of Exercise Training on Physical Capacity, Strength, Body Composition and Functional Performance among Adults with Spinal Cord Injury: a Systematic Review.” Spinal Cord, vol. 49, no. 11, 2011, pp. 1103–1127., doi:10.1038/sc.2011.62. Accessed 2 May 2018.
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